生産者ストーリー #2自然農園TOM 戸村重雄さん

トムさんと呼ばれてみんなに親しまれている戸村さん。 トムさんの人柄を現すエピソードはたくさんあるが、タヌキのためのとうもろこしの話ははずせない。 ちょうどとうもろこしの苗を植える時期に畑を訪れた際の話だ。「今年の夏はとうもろこし、たくさん植えたんだよね。いつもタヌキに食べられるから、今年は500本。これならタヌキが家族で食べに来てもちょっとは残してくれるかなって思って。お友達をたくさん連れて来たらちょっと残らないかもしれないね」。農薬を使っていないから、小さいお友達も安心して食べることができる野菜。 DSC 4637 web

そんなトムさんも、農業をはじめたころは、慣行栽培といわれる農薬も化学肥料も使った栽培方法をおこなっていた。ある時、成田に水俣病の方たちが来た。畑の端に積んである肥料の窒素を見て、「水俣病は、その窒素を作っている会社が引き起こしたものです」。その言葉を聞いて、「人を苦しめてまでこの肥料に頼っていていいのか」と、疑問に思い、それからは化学肥料に頼る栽培をすっぱりやめた。以来、40年間無農薬・無化学肥料で栽培している。

当時、無農薬で野菜を育ててる人は珍しかったが、地域に生協が出来て、オーガニックや農薬を使わない野菜の需要が高まりつつあった頃だ。 当時を振り返り、「あの頃は、力んでいたなぁ、いまは栽培方法にとらわれるよりも、農薬や化学肥料に頼らないのは当たり前で、それ以上に『楽しんで美味しい野菜を作りたい』という思いでやっています」。わたしが会うトムさんは、いつもいい感じにゆるくて、笑顔だ。 「野菜作りは自然が相手、力んでも仕方ない」と、あるがままを受け入れ、その中で楽しんで野菜を作っているトムさんはかっこいい。

畑では多品目栽培を行なっている。自然を壊したり薬をたくさん撒いたりするのではなく、環境の力を計算し、そこにあるものの力を借りて野菜を育てている。大きな木の側には、おかひじきのように日光が当たりすぎない方がやわらかく育つ作物、きゅうりも日陰のあたり、トマトは畑の真ん中に。農薬も化学肥料も与えず、水やりなども行わない。そうやって自然と調和を図りながら作物を育てている。そうすることで、虫や鳥や小動物にもお返しをしているのだと思う。 DSC 4547 web

トムさんの野菜は個性的でどれも主役を張れる。 毎週末行われている青山ファーマーズマーケットに出店して6年になるが、トムさんのお店にはシェフや料理のプロも来店する。 スーパーでは、あまり見ることがない野菜のほか、たとえば花をつけたままのズッキーニや、花を咲かせたルッコラなど、おなじみの野菜でも珍しい時期の野菜に出会えるからだ。野菜は収穫時期が異なれば味が変わるし、雨が多い年、少ない年、1週間前と、今週のトマト、すべて味が違う。そんなことに気が付くことができる野菜だ。 ファーマーズマーケットでは、自家採種のトマトやズッキーニがおもしろい交配をして、思いもよらない色や形になった話や、めちゃくちゃ辛いししとうがたまに紛れ込んでいる”ロシアンルーレットししとう”の話を聞ける。毎週、トムさんの野菜に会えるのを楽しみにしているのと同じように、トムさんに会いに来る人がたくさんいるのだ。 DSC 4343 web

どの野菜も焼いただけ、湯がいただけ、洗っただけで、あとはほんの少しの調味料をたすだけで美味しいひと皿ができあがる。それは、ピーマンや、トマトたちがしっかり個性を主張しているから。おかしな言い方だけど「わたし、いま野菜を食べてる!」という気持ちにさせる力がある。 野菜セットには、馴染みのある野菜、馴染みのある野菜だけど普段見ることができない状態の野菜、珍しい野菜が入っていて、最近よくメディアなどで人気のハマる野菜(例えばビーツやツルムラサキ、スイスチャードなど)は一層癖があって、好きな人にはたまらないラインナップになっている。 DSC 4689 web

自然農園Tomさんの『サラダ畑の野菜セット』販売中

2017年8月30日

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